伝説の電子音楽プロデューサー、ウィリアム・オービット氏死去 69歳

英国の電子音楽プロデューサー、ウィリアム・オービット(本名ウィリアム・ウェインライト)が2026年7月23日、自宅で死去した。69歳だった。遺族は8月7日にSNSで声明を発表したが、死因は明らかにしていない。声明では「彼は音楽と友情と善意で、数えきれない人々の人生に触れた。深く彼を偲ぶ」と記されている。
30年におよぶ制作キャリア
ウェインライトは1956年12月15日、ロンドンで教師の両親のもとに生まれた。1980年、Torch Songという名義でLaurie MayerやGrant Gilbertとともに音楽活動を開始し、Mayerとともに設立したGuerilla Studiosから、自身のレーベルGuerilla Recordsが生まれた。
1990年代初頭、マドンナの「Justify My Love」と「Erotica」のリミックスを手掛けたことで、両者の長期的な協業が始まる。1998年にはマドンナのアルバム『Ray of Light』のエグゼクティブ・プロデューサーを務め、トリップホップ、ニューエイジ、テクノを融合させた同作は初週セールスで当時の女性アーティスト記録を打ち立て、1999年のグラミー賞で3部門を受賞、17か国でチャート1位を獲得した。以降もマドンナの『Music』『MDNA』の制作に参加している。
同じ1999年には、Blurの『13』を手掛け、バンドをブリットポップから電子音楽・アートロック路線へと導いた。サミュエル・バーバーの「Adagio for Strings」を翻案したダンス版は、Ferry Corstenによるトランス・リミックスを経て英国シングルチャートのトップ5に入った。その後はブリトニー・スピアーズの『Britney Jean』、フレディ・マーキュリーとマイケル・ジャクソンのアーカイブ音源を用いたQueenの楽曲「There Must Be More to Life Than This」、映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』の主題曲としてU2が手掛けた「The Hands That Built America」などに関わった。名義作としては2018年のオール・セインツ『Testament』が最後となる。
ウェインライト自身がFacebookで明かしたところによると、マドンナのために『Ray of Light』の「続編」となる作品を完成させていたが「何の反応もなかった」という。また、自身の音楽業界での経験を記す書籍を執筆中であることにも触れていた。
業界からの追悼の声
DJのFerry Corstenは声明で「彼は音楽に対して独自の視点を持ち、決して分かりやすい道を選ばなかった。常識に挑み、予期せぬものを受け入れ、時代を超える音を生み出した。彼と仕事をするたびに、インスピレーションに満ちて帰路についた」と綴った。
ウェインライトとアルバム『Northern Star』で組んだメラニー・C(Melanie C)は「この偉大な人物と仕事ができたことは、この上ない光栄だった」と述べた。プロデューサーのエロール・アルカン(Erol Alkan)は「信じられないほどのプロデューサーで、私が愛してやまないレコードの数々を残してくれた」と語っている。