黒いレコードはなぜ黒いのか? シェラック・カーボン・PVCをめぐる謎

カラー盤、マーブル盤、絵柄入り、さらには液体封入の変わり種まで、2026年のレコード店の棚には多彩な盤が並ぶ。それでもなお「黒」がレコードの標準色であり続けているのはなぜか。英音楽メディアFar Out Magazineが、その由来を整理している。答えは原料そのものにはない。
原料は透明、黒さはシェラック時代の名残
レコードの主原料であるポリ塩化ビニール(PVC)は、自然な状態ではほぼ透明だ。Record Store Dayで毎年登場するクリア盤の限定盤が、それを証明している。黒い色の起源はPVCが普及する以前、「シェラック(shellac)」でレコードが作られていた時代にさかのぼる。シェラックは特定の昆虫が分泌する樹脂を原料とする素材だ。
シェラック製レコードは欠陥が出やすく、何も添加しなければ非常に割れやすかった。78回転盤のもろさは「音楽を繊細な磁器に刻み込むようなもの」と形容されるほどだったという。この脆弱さを補うため、製造側は黒いカーボン粉末を混ぜ込んだ。レコードの黒さは、もともと製造工程上の副産物だったことになる。
PVCに移行してもなぜ黒のままだったのか
1940年代末から1950年代にかけて、PVCがレコードの主流素材となった。PVCは添加物なしでもターンテーブル上で数十年の再生に耐えられるため、カーボン粉末を加える理由は本来失われていた。Columbia Recordsが初のPVC製レコードを、RCAが初の7インチシングルをそれぞれ世に出した際も、両社には黒にこだわる必然性はなかった。実際、RCAの初期の45回転シングルはジャンルごとに色分けされており、クラシックは赤、カントリーは緑だったという。
一説には、新しいフォーマットに対する当時の消費者の警戒感を和らげるため、旧来のシェラック盤に見た目を近づけたとも言われる。あるいは単に誰も色を変えようと思わなかった、またはRCAのオレンジ色より黒の方が安価だった、という単純な理由だった可能性もある。
「静電気で埃がつきにくい」説の弱点
最もよく引用されるが同時に最も味気ない説明は、「PVCは静電気で埃を吸着しやすいため、カーボン粉末を加えて帯電特性を変え、溝への埃の付着を減らし、結果的に盤の寿命を延ばしている」というものだ。
ただしこの説にも弱点がある。黒いレコードであっても埃や静電気は普通に蓄積するし、黒盤とカラー盤の両方を所有する人の多くも、埃の付きやすさに明確な違いを感じ取れていない。結局のところ、レコードが黒いのは「昔からずっと黒かったから」という以上の理由はないのかもしれない。