「バラード」とは何か——13世紀フランスからOlivia Rodrigoまで、数百年続く歌の系譜

英国の音楽メディアFar Out Magazineが、「ballad(バラード)」という音楽形式の定義を掘り下げる解説記事を掲載した。13世紀フランスの歌謡から The Beatles の〈Hey Jude〉、そして Olivia Rodrigo の〈Driver's License〉まで、数百年にわたる音楽的伝統がどのように民衆の娯楽から現代ポップスの中心的な感情表現へと変化してきたかを整理している。
バラードの歴史的起源
Far Out Magazineの記事によれば、balladの起源は13世紀末フランスの chanson balladée――物語や寓話を歌の形式で語る芸能の伝統――にさかのぼるという。この形式は間もなく英国諸島に伝わり、ロビン・フッドやアーサー王といった民話が、踊りに合わせて歌われる題材として使われるようになった。ここでballadの基本原則、すなわち詩節(スタンザ)による構成、四行詩(クワトレイン)、規則的な韻律が確立されたとしている。
印刷技術の普及後、こうした歌謡は「ブロードサイド」と呼ばれる一枚刷りの印刷物として酒場や宿屋で広く流通し、失恋や悲しみを題材に聴き手の感情に訴える内容が多かったという。19世紀に入るとballadはTin Pan Alleyのラグタイムやヴォードヴィルの音楽と並び、最も息の長い歌の形式のひとつとなったと記事は伝えている。
なぜ定義が定まらないのか
『ウェブスター辞典』はballadを「歌うのに適した韻律のある物語詩」と定義しているが、この解釈は音楽学者の間で完全な合意を得ているわけではない、とFar Out Magazineは指摘する。フォークや詩の分野では物語性が重視される一方、ポップスやロックの文脈では、ギターやピアノを核とし、感動的なメロディーと率直な歌詞を持ち、しばしば劇的な盛り上がりを伴う感情的な楽曲として理解されることが多いという。
記事の結論はやや哲学的だ。ブルースが部外者にうまく説明できないのと同じように、balladも「聴けばわかる」音楽形式だとしている。13世紀フランスの舞踊伴奏から、ストリーミング時代のヒット曲であるOlivia Rodrigoの楽曲まで――この形式の核心は変わっていない。物語と感情によって、普遍的な人間の経験に触れることだと記事は結んでいる。