クリストファー・ノーラン、『メメント』創作の裏にRadiohead『OK Computer』

映画監督のクリストファー・ノーランは、2000年公開の映画『メメント』(Memento)の創作過程がRadioheadの1997年作『OK Computer』に深く影響されていたと語っている。この発言はFar Out Magazineによってまとめられ、あらためて注目を集めた。
『OK Computer』の非線形な聴取体験
ノーランは『メメント』の制作中、『OK Computer』を主な創作時のBGMとしていた。彼はこのアルバムが一般的な作品とは異なる聴取のリズムを持つことに気づいたという。「普通のアルバムを聴くときは、体が自然と次の曲を予測してしまう。だが『OK Computer』はそうならない。それが自分にとって非常に捉えどころのないものだった」と述べている。
ノーランは、この予測不能な構造感が『メメント』の時系列を逆行させる編集ロジックと呼応していると考えている。一方で、映画のシーン順序は逆転していても、脚本自体は厳密に線形だったと説明する。「実際、自分が書いた中で最も線形的な脚本だった。どのシーンも動かせず、A・B・C・Dの連結は鉄板で、編集で入れ替える余地はほとんどなかった」と語った。
音楽と映像構造の相互反映
『OK Computer』はテクノロジーと資本主義の時代における疎外感を核心に据えた作品で、構造・情感の両面で強い映像的性格を持つ。ノーランは、当時『OK Computer』が『メメント』の構造に与えた影響はおそらく無意識的なものだったと認めつつ、振り返ってみればその精神的なつながりは明白だと述べている。
『メメント』が持つ位置づけ
『メメント』は、ノーランが自主制作の長編『Following』に続いて手掛けた、一定規模の製作費を持つ最初の作品であり、公開後は彼の映画界での地位を確立するきっかけとなった。同時期には、ギャスパー・ノエ監督の『イレヴァーシブル』(Irreversible、2002年)も同様の非線形的な逆行構成を用いた作品として話題を呼び、当時の映画界における構造的な実験への関心の高さがうかがえる。