Jason Isbellら、AI音楽プラットフォームSunoを提訴 「アーティストの身元」悪用と主張

米シンガーソングライターのJason Isbellは8月31日(月)、AI音楽生成プラットフォームSunoを相手取りマサチューセッツ州連邦裁判所に提訴した。共同原告にはジャズサックス奏者のEduardo Calle、Camper Van BeethovenのDavid Lowery、ブルースギタリスト兼シンガーソングライターのGuy Forsythが名を連ねる。全84ページに及ぶ訴状は17項目の主張を掲げ、パブリシティ権(publicity rights)に関する複数の法律への違反を訴えている。NMEの報道によれば、この訴訟は個別楽曲の著作権侵害を狙ったものではなく、プラットフォームの構造そのものを標的にしている点が特徴だ。
訴えの核心:氏名をインデックスにした商業製品
原告側が問題視しているのは、ユーザーがアーティスト名を入力するだけで、作風や音の似たAI楽曲を瞬時に生成できる仕組みだ。訴状によれば、「Jason Isbell」と入力すると〈Paper Bell〉というAI楽曲が生成され、「フィンガーピッキングのアコースティックギターを中心とした現代的Americanaのシンガーソングライター」と説明され、ボーカルスタイルはIsbellに似ていると指摘されている。「Camper Van Beethoven」と入力した場合は、「1980年代後期の風変わりなオルタナティブロックで、フォークロックの要素にアコーディオンやフィドルが時折彩りを添える」作品が生成されたという。
訴状はさらに、Taylor Swiftのような名前や、曲名を直接入力した場合でも同様の現象が起きると主張する。Consequenceが伝えた法廷文書には「ミュージシャンのアイデンティティは彼らの財産である」と記され、子どもが曲を聴いてギターでリフを真似ることと、「氏名をインデックスにし、ネット上でほぼ入手可能なあらゆる音楽を基にした商業製品を構築すること」は別物だと指摘している。同文書はまた、氏名への応答性はプラットフォームの「設計された体系的な商業機能」であり、孤立した技術的産物や予期せぬ創発的挙動ではないと主張している。
訴状は、Sunoがアーティストの声や作風を無断で収集したことを否定しているものの、ソフトウェアには依然として抜け道があり、ユーザーがアーティスト名を入力してその音を模倣した楽曲を生成できる状態が残っていると指摘する。原告側は本件を集団訴訟として認定するよう求めており、訴訟に直接参加していないが同様に影響を受けたミュージシャンも対象に含めるとしている。加えて、Sunoに対してパブリシティ権侵害の賠償責任と、無許可でアーティストの身元を利用して得た利益の返還を求めている。
Sunoを巡る近年の法廷闘争
先月、Sunoはドイツの著作権管理団体GEMAとの訴訟で敗訴した。GEMAは、Sunoが許諾を得ず、作詞作曲家への使用料も支払わないまま、Boney M.の〈Daddy Cool〉、Lou Begaの〈Mambo No. 5〉、Alphavilleの〈Forever Young〉を含む管理楽曲をAIモデルの学習に用いたと主張していた。この判決は、他のAI企業が今後GEMAの楽曲カタログを利用する際にはライセンス料の支払いが必要になることも意味する。
2024年には、Warner、Sony Music Entertainment、Universal Music Groupの3社が「ほとんど想像を絶する規模」を理由にSunoを著作権侵害で提訴していた。2025年にはWarnerがライセンス契約締結という形で和解している。ストリーミングプラットフォームのDeezerも最近、自社プラットフォーム上でAI生成音楽の数が大幅に増加していると指摘している。