Dubaiチョコレートはなぜ世界的ブームに? 英メディアがUAEの「食のイメージ戦略」を指摘

英国の文化メディアFar Out Magazineは2026年8月26日、過去1年半から2年ほどで世界的なブームとなった「Dubaiチョコレート」について、アラブ首長国連邦(UAE)がこれを国家イメージ戦略の一部として取り込んでいると指摘する記事を掲載した。記事はこの現象を「food-washing(食のイメージ洗浄)」と呼んでいる。カフェチェーンのPret A Manger(プレタ・マンジェ)がドバイ風味のホットチョコレートやラテ、デザートを同時展開したことに触れつつ、このチョコレートバーがSNSのタイムラインからガソリンスタンドのレジ横まであらゆる場所に浸透していると述べる。中身は刻んだピスタチオと中東の極細フィロ生地「kadayif」で構成され、その緑色の見た目がSNS時代を象徴するビジュアルになったという。
TikTokでの拡散から王太子とのコラボまで
- 2021年:エジプト系英国人でドバイ在住のショコラティエSarah Hamouda氏が、チョコレートとピスタチオが食べたいという思いから商品を開発。商品名は「Can't Get Knafeh of It」
- 2023年:インフルエンサーのMaria Vehera氏による試食動画がTikTokで拡散し、多数のクリエイターが追随。自作レシピや各種「ドバイ風味」派生商品が生まれた
- 2024年:ドバイの王太子がHamouda氏とコラボレーションし、自身のチョコレートバーを発売
Far Outによると、UAE当局は同時に有料メディア露出を通じてDubaiチョコレートを宣伝しているという。記者のAlex Skopic氏は関連記事の中で、CNN Travelのある記事に編集部注記が付されており、その記事が取り上げている国自身がスポンサーになっていたことが明記されていたと述べている。
スポーツ冠名・文化投資と国家イメージ
記事はこの現象を、UAEが石油マネーで長年続けてきたイメージ戦略の文脈に位置づけている。豊かな観光地・高級なイメージを対外的に打ち出す一方、国内の人権問題を覆い隠しているという。具体例として、アーセナルの本拠地スタジアムがEmirates航空の冠名であること、マンチェスター・シティがUAEの副大統領兼副首相によって所有されていること、西側の複数の文化機関への投資、そして映画撮影誘致のための現金補助などが挙げられている。
「スポーツウォッシング」から「食のウォッシング」へ
筆者は、sports-washing(スポーツを使ったイメージ洗浄)は長年議論されてきたが、food-washingは一見新しい現象に見えて実際には以前から行われてきたと指摘する。記事が挙げる前例は、1930年代からタイ政府が「パッタイ」を通じて国内向けには国民アイデンティティを構築し、対外的には現金インセンティブで普及させてきたケースだ。伝統的なタイ料理と比べて辛さや調理のハードルが低いパッタイは、外国人観光客を惹きつける手段として使われてきたという。